風と木の詩:40年前のセンセーショナルな超大作
竹宮恵子先生の「風と木の詩」を今更ながら読みました。
もうね、すごいよね。これ、40年前のなんだぜ…。
この作品の噂はかねがね、BLならこれを読め的に語られてる記事などもあって気にはなってたんですが、読める機会がなかなか訪れず、ようやく全巻無料ってことで読んでみました。
読了後、しばらく放心しましたね。
ジルベールとセルジュ、寄宿舎学校で出会ったこの2人の有名すぎる物語ですが、出会い編、双方の父親の話、相思相愛編までキター!と思ったら若さ故のすれ違い、仲直り・駆け落ちでまさかこんな結末を迎えるとは思わず、第2章が始まった時は期待を込めながら、しかしどんどん劣悪になっていく2人の環境と関係性、まさかの助っ人登場に少し華やいだけれどもつかの間の夢、現実がどんどんどんどん、あぁぁ…。
最後はもう涙腺崩壊でした。
いやその前にも涙腺決壊した場面は数知れず…。
絵がやはり40年前の絵なので入り込むのに時間かかりましたが、一旦入り込んでしまうと…出られない。しかも1ページに詰め込まれた情報量半端ないんです。
セリフ・モノローグ多いし、描き込みも逐一読み解いていかないといけないし、こんなに頭が重くなるのに止まれない漫画は「窮鼠」以来です。しかももっと詳しく知りたいと思ってしまう。最初2人の父親編が始まった時になぜに、と思ったのですが、この2人を読み解くにあたって外せない話でした。これで物語がぐっと厚みを増します。
奔放なジルと実直なセルジュ、相反する2人が強烈に惹かれ合うのは運命、ジルのつかの間の幸せはセルジュによってしかもたらせられないものでしたが、そんな危うい2人だからこそ迎える結末はもう見てられない。そしてさらに突きつけられる非情な現実。もう10代の若者の話とは思えない。こんな瑞々しくも重々しい青春を生きてしまった2人とその級友達、若さ故に、とはよく言ったものです。読んだこっちは老成するわ。
読了してもなお心の中にくすぶり続けます。
しかも当たり前の事ですが、全てアナログですよ、この描き込み。
身体つきなんかはね、ぶっちゃけ最近の作家さんの方が好みです。でもこの少年の顔・身体、だからこそ成し得た物語じゃないかなとも思うんですよ。
すさまじすぎる表現力、この一言に尽きます。