アラフォーがリアルで言えないハマリ事を語るブログ

アラフォー主婦がリアルで語れない事を書くブログです。とっちらかってます。

オーバースコール:優男くんの救済物語

上田アキ先生の新刊です。

以前「ワンダーボーダー」というお話の中に出てきた、あまりにも優しすぎてあまりにも可哀想だった夏郎さんが主人公のスピンオフ作品です。

スピンオフだけど単独でも大丈夫です。前作を知ってたらうわーってなる場面もあるけども、話の流れ的には重要ではありません。

 

五年の恋が一瞬で散ってしまった夏朗さん、思い出の公園のベンチに腰をかけていると声をかけて来たのが「梅雨彦」くん。一瞬困ったような笑顔が失恋相手に似てるのが気になってるうちに、相手が放っておけないと強引にお部屋に連れて行かれて自分でも知らない自分を出されてしまいます。

その後も会いに行ったりとお付き合いに発展しそうなところへ暗雲が立ちこめます…。

 

夏朗さん、梅雨彦くんと季節感溢れるネーミングです。前作の元彼は洋春くんだったし、相手は秋がつく名前、さらに彼の元カノは冬子さんです。

前作は冬から春へ、そして今回は春から梅雨を経て夏への季節の移ろい、この方の描く季節感は本当に素晴らしいです。今回は梅雨の季節だけあって雨のシーンが沢山ありましたが、じっとりしてないんですよね。カラッとした夏になる予感を感じさせるような、タイトルのスコール的な雨が多いです。梅雨彦くんも名前こそ梅雨ですが全然あっけらかんとしてるし(笑)。

 

しっかしこの方の作品って一見ぶっきらぼうな感じですが、しっかりと繊細なんですよね。絵もストーリーも。
「恋が落ちたら」の時は手に目がいきましたが、今回は水に目がいきました。水も滴るなんとやらだらけです。泣く一歩手前の表情がなんとも言えない…。
そうそう、表情が一々素敵なんです。仕草もいい。

梅雨彦くんは純粋だけど「ええぇ?」って思うとこ満載の性癖ですが、そこをイケオジに片足をつっこんでる夏朗さんが年上の包容力で焦らずじっくりしっかりと諭して包み込んで今回こそは離しませんでした。というのか離せなかったんですね。

これは前回の反省からなんでしょうか?前回は聞き分けの良すぎるタダの優男でしたが、今回は手を離さずにいれました。もし前回そうしてたとしてもダメだったと思うので(失礼)、収まるところに収まった、といった方がいいんでしょうね。それにしても切ない。痛い。あのシーンはキッツいですよ。よくあれでキレたりしなかったもんだ。

でも怒るところは怒りますね。波風立たせないような人だけど、やっぱりここぞというところではガツンといきますね。あぁ優男の包容力。

 

きっと今までなかった事だらけなんでしょうね、梅雨彦くんと出会ってから一気に開花したというか。梅雨彦くんも今まできっと嫉妬というものを知らなかったんだと思います。あの場面で初めて嫉妬を覚えたのに夏朗さんじゃないけどグッとましたー。

 

そして最後のシーン、いいですねー。ふとすれ違った楽しそうな二人を見つけた洋春くん、きっとあんな別れかただったし、少なからず気にかけてたんでしょうね、ホッとした表情です。なんだか泣きそうになりました。

 

逆に当て馬の豪くん、救いようのないクズだと思ってましたが、あんな過去があるとは…。でもこれで遅いながらもようやく一歩が踏み出せたようです。彼にも幸あれ、です。

 

それにしてもすご〜く中身の詰まった1巻でした。270ページです。すごいボリューム。
話が濃いので納得ですが、中だるみなく読みきってしまえます。
そうそう、結構エチいシーンたっぷりなんですよね。下手したら枯れてそうなそういう雰囲気を持たない優男な夏朗さんですがしっかりがっつりやってます(むふふ)

あんな骨ばった男同士なのにエロいんだもの、不思議ですよねー。